法政大学 生命科学部 環境応用化学科 河内研究室

研究室概要

有機典型元素化学研究室は,有機ケイ素化合物の合成・構造・反応についての研究をおこなっている。
有機ケイ素化合物とは,ケイ素と炭素の結合を含む化合物のことである。ケイ素は原子番号14,質量数28,炭素と同じ14族の第3周期に位置している。地球全体でみると,ケイ素は,鉄,酸素に次いで三番目,地殻中では酸素に次いで二番目に多い元素である。天然では,ケイ素は酸素と結合してケイ石(SiO2)として存在している。
このケイ石を電気炉中で還元することで金属ケイ素(Si)に変換し,これに銅触媒存在下,塩化メチルを通じることでメチルクロロシラン類(MenSiCl4-n : n = 0-4)が合成される。これらが有機ケイ素化合物の原料となる。地球上に豊富に存在するケイ素を原料として,それを有効活用できる形にすることで,有機ケイ素化学は,資源問題や環境問題の解決に貢献できると考えている。しかし,現在,工業的に利用されているのは,シリコーンとよばれるケイ素−酸素結合を主鎖に持つポリマーがほとんどである。今後は,シリコーン以外の新しいタイプの有機ケイ素化合物の開発が,有機ケイ素化学における大きなテーマになると考えられる。本研究室では以下のようなアプローチによってこのテーマに取り組んでいる。

(1)有機分子を効率よく変換するケイ素試薬の開発

本研究室ではこれまでに,ケイ素の三配位アニオン種や五配位化学種など,反応性の高い有機ケイ素化合物を合成してきた。これらの特性を活かして,有機分子を効率よく変換したり,新しい有機ケイ素化合物を合成するためのケイ素試薬を開発している。

(2)官能性ケイ素化合物の合成と単離についての指針の確立

ケイ素原子上に官能基(=ヘテロ原子置換基)を有するケイ素化合物は,さまざまな有機ケイ素化合物やシリコーンポリマーを合成する際の基幹原料となる。ケイ素原子上の官能基を別の官能基に変換する反応(官能基変換反応)は,有機ケイ素化合物を合成する重要な手法だ。しかし,どういう場合にどの反応(試薬)を選択するかということに関して,統一的な指針は確立されていない。本研究では,代表的な変換反応について比較検討をおこなうことで,官能性ケイ素化合物合成の指針を確立する。

(3)有機分子の炭素の一部をケイ素に置き換えた分子の合成と物性研究

ケイ素は炭素と同じ族に属するため,結合様式は同じ四配位である。そのため,原理的には,分子全体の形を壊さずに,炭素骨格の一部分をケイ素原子に置き換えることが可能である。しかし,炭素とケイ素では原子の大きさ(原子半径)や電気陰性度が異なるため,分子の部分構造や電子的性質が変化し,ひいては分子全体の性質も変化することが期待できる。この手法を,機能性分子・医薬品・化粧品などへと適用し,性能を向上させたり,新しい機能を引き出すことを計画している。

(4)ケイ素−ケイ素結合を主鎖に持つオリゴシラン・ポリシランの合成および物性研究

炭素−炭素結合が連なる分子=アルカンは石油の主成分であり,自然界に広く存在する。これに対して,ケイ素−ケイ素σ結合を主鎖に持つ鎖状分子は,オリゴシランあるいはポリシランと呼ばれ,自然界には存在せず,すべて人口的に合成されるものである。このケイ素−ケイ素σ結合は,ケイ素鎖が伸長すると共役するため,オリゴシラン・ポリシランは,特徴的な電子物性・光物性を示する。このため,鎖状分子の長さや部分構造をコントロールすることは,この分野での重要な課題となっている。本研究室では,構造が制御されたオリゴシラン・ポリシランを効率よく合成する手法の開発に取り組んでいる。

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